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ディーラー烈士伝

「自分が看板−閃きと努力で勝負」−小林淳 氏[中編]

2014年12月03日(水)

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(前編はこちらから)

■ニューヨークでステップアップを目指す

セパックで経験を積んで、外資系の銀行で為替ディーラーとして生きていけるという自信はある程度はついたが、外資系銀行の東京支店だけにいては、経験は十分とは言えず、箔がつかない。さらにステップアップするためには、金融のメッカ、ニューヨークで働くのが一番だと感じていた。当時、ニューヨーク市場では、日本の機関投資家の商いが猛烈に膨らんできており、それに沿ってどの外資系銀行もニューヨーク支店に日本人のセールス担当者を配置し始めていた。

複数の銀行からオファーがあったが、最終的に、週末を利用して‟弾丸面接”に行った、ロイズ銀行(以下、ロイズ)ニューヨーク支店に転籍を決め、89年に渡米した。ニューヨークに来て職場で最初に驚いたのは、ディーラー同士の喧嘩だった。米国人は、相場に関連する喧嘩ならまだしも、つまらないことでも本気で喧嘩する。ある日、ディーリング・ルームで喧嘩が起きて、マルク円のディーラーがお昼のサンドイッチの大量のピクルスを上司であるマネージャーのトレーディング・デスクの上にバーンとぶちまけた。 すると、そのお返しとばかりに今度はそのマネージャーがバケツに入っている大量の氷を、相手のデスクにバーンとぶちまけた。

日本人は、上司に逆らうなんてことはほとんどあり得ないのだから、彼らのこのような行為は、アジアから来た自分には大変なカルチャーショックだった。ただし、このようにつまらないことで喧嘩になっても、上司からは忠告のみで、翌日から彼らは何事もなかったかのように普通に業務に戻っている。後を引きずらないのだ。基本的には、仕事のところで実力があり、会社に必要とされている人は、馬鹿をやってもクビにならないということに、驚きつつもいたく感心した。

■他人がやらないことで成績を上げる

ニューヨーク市場には、その頃、数ある外資系銀行で働く日本顧客向けのセールス・スタッフは既に22人いて、私はその中で最も新参者だった。従って、自分としては、後発組としてどうやって彼らを上回る成績を上げることができるのか。それが赴任当時の一番の課題だった。そのために私がしたことは、早朝5時の出社だった。ニューヨークの朝5時は、東京の夕方7時(冬時間)であり、顧客はまだオフィスに居る。

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早朝のオフィスから「何かオーダーはありませんか?」と電話すると、「あれ、こんなに朝早く出社しているの、一生懸命やっているね。熱心な人にはいくらでもオーダーをあげるよ」と感心されて、大量の注文がもらえた。日本経済がバブル期に入り始めていた頃だったので、巨大なポートフォリオをキャリーする機関投資家には、何千本(1本=100万米ドル)という実需のオーダーが毎日のようにあった。

また、何か他にも自分独自のやり方でお客さんにアピールしなくては駄目だと考えて、時系列で値動きやフロー、イベントなどを書き入れたデイリー・レポートを作成し、毎日30−40社にファックス送信していた。それを見ればニューヨーク時間に何が起きていたのかが網羅できる内容だったことから、レポートは日本顧客の間で大変評価されるようになった。

このように自分なりに努力して半年、銀行のマネージャー連中が驚くような実績をたたき出していた。ロイズ入社当時の年収は8万ドル。当時のレートで換算すると約1000万円だった。私は会社の次の個人査定の際には、給料は最低でも5割アップくらいは望めるのではないかと密かに期待していた。アメリカ社会の個人評価に対する基本概念は、自分自身にそれだけの価値があるのなら、堂々とアピールして正当に評価してもらう必要があるということ。私は給料の査定時期になって、現状の5割増しでの折り合いを狙いながらも、試しに倍の16万ドルで交渉したところ、見事にその額を勝ち取ってしまった。

その人材に価値があると判断されれば、それに見合う給料を支払わないと他社に引き抜かれてしまうリスクが出てくる。外資系企業で働いていく上で大事なのは、自分がもらっている給料が第三者の目から見ても正当と思われるよう、給料に見合った働きをするということである。自分が得られる経済的な評価というのは、自分が組織に対して提供できる付加価値の大きさによってドライに判断されるということを、私は現職においても自分の下で働くスタッフに常に教えるようにしている。

■正統派でなくても発想と努力次第で勝てる

私流の為替ディーラーに向いている人材の見極め方としては、入社面接の時に、「マニュアルがありますか?」とか、「評価が悪ければクビになることもあるのですか?」などと後ろ向きの考えをしている人というのはバツ。逆に、「もし、ものすごい成績を上げたら、場合によっては頭取以上のボーナスがもらえるのですか?」と聞いてくるような人だったら、雇いたいと思う。外資系の金融機関に入社するときに、まず普通に考えるのは、経済的により豊かになれるチャンスがあるということである。せっかく、ハイリスク・ハイリターンの世界に入っていくわけだから、そういった気概がないと為替ディーラーとして勝負していく意味がない。

現代の若者は、為替ディーラーという職の表面的なファッション性を重視し過ぎているように思える。しかし、彼らが本質的に持っているものというのは、非常に保守的な考え方であることが多い。自分のすべてを賭けて勝負してクビになっても仕方がないというような発想をもつ者は少なくなった。また、外資系の金融機関だから、頑張れば頑張るほど、評価に見合った経済的なリワード(報奨)は多くなる可能性があるのだが、そのような感覚も希薄である。実際、なるべくディフェンシブに業務をこなし、クビにならないように生きていきたいと考える若い人たちが多くなったように思う。

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私自身、学生時代は結構ちゃらんぽらんで、一流大学を出ているわけではないし、為替市場でのキャリアも、コモディティーから入って、日経新聞の求人募集で外資系の銀行に転職している。その意味では、私は正統派ではなく、ある種の異端児である。しかし、むしろそういう立場において、社会で勝っていくためにはどのような発想をすればよいのかを良く考え、そして実践してきた。常に向上心を持ち、目標に向かって努力すること。そして、人と上手に付き合うことを心掛けていけば、人生勝ち残っていけるのだということをこれからの若者に教えていきたいと思う。最近、講演する機会をいただいている大学のゼミでは、時代は違うものの、自分が厳しい社会で実践してきた生き様を学生の皆さんに、教え伝えていくようにしている。

今の世の中は、先に述べた入社面接の折りの質問のように、マニュアルが中心になっているように思える。マニュアルとは、大多数がスタンダード(標準)に考えたものがマニュアル化されるということであり、それを皆が見るということは、標準的な枠の中にどっぷりと浸かってしまうことになる。私は、それではいけないと思い、学生の皆さんには、“資本主義社会の中では、基本的には少数派が勝つ”ということを教えている。

要するに、人がやらないことをやっていけば、競争相手が少ない分だけ自分が勝ち残れる可能性が高まるということである。つまり、資本主義経済の中では、少数派に居るということで一番おいしいところが儲かるということになる。これが資本主義経済で立ち回る基本である。為替に例えるならば、皆が明らかにドル買いだと盛り上がってポジションがドルロングに傾斜し過ぎた場面では、大多数の発想に相反して、ドル売りを仕掛けるべきであるということである。おそらく、その後にドルは急落することになるのだから。

(後編へ続く)

*2014年10月20日の取材に基づいて記事を構成
 (取材/文:香澄ケイト)

【前編】人とのつながりが将来の道を示唆
【中編】正統派でなくても発想と努力次第で社会で勝てる
【後編】キャリアと知見を次世代に伝える

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>>「The FxACE(ザ・フェイス)」インタビューラインアップへ





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プロフィール

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TheFxACE(ザ・フェイス)企画チーム / TheFxACE

為替ディーラーのご経歴を持つ方々に、ご自身の生き様や相場に対する考え方などをお伺いしていきます。

[取材/文]
香澄ケイト(かすみ・けいと)/外為ジャーナリスト

米国カリフォルニア州の大学、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国後、外資系証券会社で日本株/アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事。退職後、株の世界から一転して為替証拠金取引に関する活動を開始し、為替サイトなどでの執筆の他にラジオ日経への出演およびセミナー等の講師も努める。

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