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業者が客を追い出すとき(後半)

2014年07月06日(日)

>>業者が客を追い出すとき(前半)はこちらから

3)技術的な客観性

確かにハッキング取引をする連中がいるとして、ではツール取引かどうかを判断する証拠を業者側は手に入れることができるだろうか。客から飛んでくる注文が最速で0.2秒以内だったとしよう。さらにそれが10回連続で来る。しかしこの業者が提供する取引システムで、手動で売買すると一回の発注に間違いなく2秒はかかるとしよう。そうなると明らかにこれはハッキング取引であるといえるだろう(※)。

※ここから私は「ツール取引」と「ハッキング取引」を区別して使う。ツール取引それ自体に違法性とか契約違反性という概念を持ち込まない。今の時代、ある程度ツールを自分で開発して利用する環境があることはシステムを開発する段階で前提としてとらえざるを得ないと思っている。であるがゆえに一部の業者はAPIを公開もする。発注の手段がどうであれ、発注に利用する注文レートに対する作為的操作がないのであれば、それ自体に違法性はないとする。

単に、頻回取引としての発注スピード間隔だけの問題であれば、それは技術的対応力の問題であるし、それを排除したいのであれば技術的に対応するか契約で縛るかのどちらかである。一方ハッキング取引は、本来そのタイミングでその注文レートは業者のシステムからは配信していないにも関わらず、ハッカー側のデータ操作により、あたかもそうであるかのようなマスキングが行われるような発注がされ、結果的に約定するはずもないのに約定してしまうような行為を指す。したがってそこには悪意が明確に存在し、業者側には想定外の損失が発生することが認められる。以上の定義をベースに以下、それぞれの用語を使い分ける。

とするなら、最初に顧客とかわす契約に、注文の間隔が2秒未満である現象が頻繁に見られた場合は、口座強制閉鎖するとうたえばいいのである。あるいは、システム側で一回発注したらそれから2秒間は次の注文を受け付けない仕掛けをサーバー側で実装すればいいことになる。むろんそういう制約をかけていることは開示しておかないとフェアではない。今、何を言ったかというと、結局ツール取引がどうだこうだではなくて、業者のシステムが客の注文スピードに追い付けないということに尽きる。つまり「ツール取引=悪い」、ではなくて、「ツール取引によって想定するシステムのパフォーマンスが出なくなる⇒業者がカバー収益をこの客の取引から上げにくくなる⇒それを防御するシステム的な改良が施せない⇒この客を相手にし続けることが困難」というのが実態である。本来業者として自分の提供するシステムがいろんな意味で脆弱ですと宣言するのはつらいものである。

かつてのFXシステムはいったん配信したレートは30秒間有効であるといった制約しかかけていなかったが、最近のシステムは、配信したレートそのものに時間的制約をかけることは無意味化し、その代り値段を含んだ注文が約定判定エンジンに到達したときの実勢レートと比較して、想定する鞘が抜ければ約定を返し、そうでなければ約定拒否を返すような仕組みに変わってきている。そのロジックが搭載されている限り、客側がいかなるツール取引を駆使して頻回取引を行っても、ホスト側の約定エンジンをだますようなハッキングをしない限り、業者側が損害をこうむることはない。仮にそのようなハッキングが証拠をもって認められた場合は、そのシステムの脆弱性は相当危険なものであるという大きな反省が業者自身必要になるものの、業者はその顧客の明確な悪意を告訴して容赦なくたたくことに何らためらいはない。そうした行為はたとえ契約書明示されていなくても公序良俗にてらして、不法行為であるといえるのではないだろうか。

 一部の業者は注文のAPIを公開している。そうでなくてもブラウザーで提供すれば、裏側のコードは見えてしまうので発注のAPIを直にたたくことはその手の知識のある人なら容易である(ちなみに私にその技術力はない。念のため)。それらを利用して、自分でツールを開発し、業者間のアビトラをして儲けている人たちも世の中にいるが、アビトラは金融市場にとって必要な流動性の源泉でもある。それをもって悪いとか迷惑とかは言えない。裁定取引が存在しない市場は未熟な市場である。裁定取引が存在する市場では、業者は自分のポジションに応じてプライスをずらす行為がしにくくなる。それゆえ公正なプライスが担保されてゆく。

100歩譲って、明確に黒だといえるのは;

●システムを何等かの手段でハックすることで、本当ならその値段や金額ではそのタイミングで発注できないはずなのにしていて、
●しかしそれに対する防御を業者側がシステム的にすぐにできず、
●サーバー側がそのまま業者にとって不利なのに約定を返してしまう


という事実が確認された時であり、このときはその客に対して「申し訳ないが、うちではお相手できないので出て行ってください」、と言えるケースであると私は思う。なぜそういうときだけだと思うのかというのが、次のテーマになる。

4)業者としての矜持(プライド)

 「客がもうかりすぎたから、インチキしている。だから出ていけ」、「取引頻度が高すぎる。そして結果的にすごく儲かっている。これは絶対ハッキング取引に違いない。だから出ていけ」というような論法に聞こえてしまうような判断を業者側がするのはリスクが大きい。また、上述の理由で、システム的に防御ができないので出て行ってほしいというのも業者として言うにはなかなか勇気がいる。

 業者は本来プロである。すくなくとも投資家はそう見る。プロにはふつう不文律のプロとしてのプライドがあり、そこから生まれる常識とか、超えてはならないラインとか、あるいは守るべき一定のレベル感があるものである。それを守ったからといって何か得をするわけでもないし、逆に守るがゆえに損をする、あるいは高い開発コストをかけなくてはならないこともある。しかしその姿勢を顧客にアピールすることで得られる信用というものは金では買えず、時間と努力でしか買えないかけがえのないものである。長い目で見てそれが企業を大きくもする。多かれ少なかれ、今ある大企業はそうやって会社の基盤を大きくしてきたと思う。

 結局、自分の会社はどうあるべきか、どう社会に認められたいかという経営者の考え方がこういうところにじわじわとにじんでくるものだと思う。そして一般の人はそういう“にじみ”を見てないようでよく見ているものである。人はそういう企業の生地(きじ)の“風合い”というものを言葉ではなく、感覚として確実に受け止めているものである。

 プライドは高すぎてもいけないが、低すぎると相当始末が悪い。特に客の命を預かるような商品やサービスを提供している場合顕著である。自動車メーカーのリコール問題などはその最たる例である。いや、金融は命を預からない(?)、いやある意味預かっている(!?)そうした判断の差も経営のにじみとして出てくるのではないだろうか。

 私も業者側にいたときにそういうハッキング的な事例に対処したことがあるが、その時の追い出しの判断基準として(時代が古くて合わないかもしれないが)、

●明確にハッキングの事実を証拠として手に入れること【証拠主義】
●あり得ない注文(価格、取引額)がサーバーにとんできてその時点で即座にカバーすると常にマイナスになること【『理論的』な損失の継続性であり、結果ではない】
●そのような現象は他の顧客(マジョリティ)ではおきていないこと【特異性】
●客と直接電話で会話してそういうハッキング的な現象がみられるが、とやんわり警告を出すこと【おとなの対応、業者のプライド】
●警告をだしてもその行為をやめないこと【悪意の継続性】

以上の条件が満たされたときに、強制的口座閉鎖を宣告するようにしていたが、ここで私の条件には、頻度(頻回取引)にも触れていないし、結果的にディーリングで損が出るかどうかも判断基準とはしてない。頻回の定義があいまいだし、上述のとおり頻回=悪でもないし、IEモデルで生まれる結果的ディーリング収益をもって個々の注文に対する損益は特定できないからである。

ついでながら触れておくが、この問題と、客と約束したキャッシュバックを払う、払わないは別次元の問題である。一緒にすると話がややこしくなる。契約違反行為があったと認められる場合に、その客が本来有していたその業者から得られる何らかの経済的利益すべてがはく奪されうるかどうかは、私の専門領域でもないし、業者の立場にない今の私の興味の対象でもない。

ひとつ危惧するのは頻回取引という言葉があたかも悪い行為のように使われそのイメージがついてしまうことである。たぶんHFTという言葉はまさに日本語のこの頻回取引にあたるのだろうが、頻回であることが悪であれば世界中で悪がはびこっているのが今の世の中である。
つまるところ、頻回=悪とかの問題ではなく、金融取引は契約であるから、最初にどういう契約、合意のもとに始めたか、そしてその契約の内容が社会通念上の道徳、合理性、常識等に照らして妥当であるかどうかが問われるものである。硬くいえば透明性と公正性である。業者側がどうでもとれるように契約書の文言をあいまいにすれば返す刃で業者自身が切られることにもなりかねない。だけに、プロは常に切磋琢磨し、顧客以上の知見、技量を維持するように努めなくてはならないと私自身も含め自戒するべきなのである。

IT化が進んだ現代においては、プロとしての知見にはITリテラシーが不可欠になってきている。それは金融業界にとどまらない。それに加えて法律、規制、業務など、様々な環境を総合的に見なくてはならない。法や規制は常に後追いであり、現実とのギャップは常に存在する。そのギャップをどう解釈するかで多くのコンプラ担当者や規制当局、司法関係者は頭を痛める。企業が成長すれば巨大化する個々の業務機能は分散化され細分化される。その結果全体を俯瞰できる人材が育ちにくくなる。そんな話は以前にもここでしたことがある。インターバンクの為替取引の電文にValueDateが入れられないと聞いて、そりゃあありえないと即答する人はどれくらいいるだろう。先物取引と先渡取引の違い、通貨ペアと銘柄の違い、value date とsettlement dateの違い、spot , forward ,swap の関係、スワップ金利のレート決定の裁定モデル、などなど、それらの概念についてきちんと整理できている人はどれくらいいるのだろうか。

ディーリング収益の計算モデルは経理的に正確にできている業者はどれだけあるだろうか。非対円通貨ペアを提供し、その通貨ペアをカバーする業者が見ているリアルタイムの円ベースのディーリング収益は、経理的に処理するべき収益とは違うものだといったとき、そりゃあたりまえじゃないかという人はどれくらいいるだろうか。

ここまで成長してきた外為証拠金取引市場である。そろそろ本商品の基礎的概念というものについて精緻な解釈を整理するときが来ているのではないだろうか。そういうことがおざなりになったまま、発展し続けることに大きな危惧を抱いているのは私だけだろうか。

今日の私の記事を読み返していただければ気づかれると思うが、結局私は各テーマの最後の判断基準、あるいは評価として、無意識のうちに「悲しい」「勇気がいる」「つらいものである」「自戒すべき」と締めくくっている。法的にどうであるかという問題ではなく、本件、本質的にはそういう性質の問題であると思っている。




Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、米国インテグラル社の日本支店に勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXにかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)がある。。

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