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『経済学者の「良心」を示したバーナンキ議長』 ― 中野哲也氏

2013年06月26日(水)

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6月19日、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見に臨み、QE3(量的緩和第三弾)の出口戦略について、「工程表」というべきスケジュール観を金融市場に向けて発信した。

雇用統計など経済指標の好転という条件付きだが、バーナンキ議長は

(1)2013年中に証券購入額の縮小をスタート、
(2)2014年半ばまでに証券購入を停止、
(3)その後、時間をおいて利上げ

などの考えを示した。その具体性が、高をくくっていた市場関係者にはサプライズとなり、ニューヨーク市場のダウ平均株価は200ドル超も値下がりした。

昨年9月、FRBは毎月850億ドルに上る証券(うちMBS=住宅ローン担保証券=450億ドル、国債400億ドル)の購入で景気を下支える政策、いわゆるQE3を決定し、今なお維持している。それに伴い、リーマン・ショックで崩壊した住宅市況の回復が加速した。また、「財政の崖」と呼ばれた米政府の歳出削減ショックも緩和し、ダウ平均株価は1万5、000ドルを超え史上最高値圏まで上昇した。

日銀とは異なり、FRBは物価安定に加えて雇用確保も法律で義務付けられる。非農業部門就業者数の増加ペースが緩慢なため、市場には「当分、QE3が続けられる」という楽観論が優勢になり、これがダウ平均株価の上昇トレンドを支えてきた。昨年11月以降の日経平均株価の大幅な上昇も、異次元金融緩和を柱とするアベノミクスの効用だけでなく、QE3との「相乗効果」を無視できない。

<NYダウと日経平均の推移>

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■来年初で勇退?退任観測が強まるバーナンキ議長

毎月発表される雇用統計の非農業部門就業者数は、今年に入ってからも雇用回復の目途とされる20万人を超えたのは2月だけ。5月の失業率は7.6%であり、FRBが利上げの判断基準の一つとする6.5%より、まだ1%以上も高い。オバマ政権も「雇用創出の加速や中間層への支援強化に集中することが重要」(クルーガー大統領経済諮問委員会=CEA=委員長)と判断しており、来秋の中間選挙を控えて雇用回復の緩慢なペースに警戒感を隠せない。

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(出所:米労働省)

すなわち、労働市場の先行き不透明感が払拭されない中で、冒頭で指摘したように、敢えてバーナンキ議長は出口戦略の「工程表」を公表したのである。当然、株式市場のネガティブな反応も想定していたはずだが、長い時間軸で考えれば金融危機対応の「異常な政策」をいつまでも続けられない、という決意表明と解釈すべきだろう。

2006年に就任し、現在2期目のバーナンキ議長は続投を望まず、来年1月末の任期満了で勇退するとの見方が多い。任命権を持つオバマ大統領も、「本人の希望や予定よりもはるかに長くトップを務めているモラー連邦捜査局(FBI)長官に少し似ている」(6月17日の米PBS番組)と発言している。

それだけに、大恐慌研究の第一人者で米国を代表する経済学者のバーナンキ議長は、エコノミストの「良心」に基づいて、退任前にQE3出口までの道筋を付けたのではないかと思う。

■「半神半人」のカリスマ性、市場を支配したグリーンスパン前議長

グリーンスパン前FRB議長(在任1987〜2006年)は、レーガン、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)と4つの政権下で市場から絶対的な信頼を勝ち取り、米経済は目覚ましい復活を遂げた。

筆者の時事通信ワシントン特派員時代(2001〜2005年)、取材でお世話になったアラン・ブラインダー元FRB副議長(現プリンストン大教授)は、皮肉交じりにグリーンスパン議長を「デミゴッド(半神半人)」と呼んでいた。実力以上のカリスマ性がマーケットを支配したから、「正しいか正しくないかは別にして、グリーンスパン議長に逆らって相場を張っても必ず損をする」(大手銀行幹部)という空気がウォール街に充満していたように思う。

グリーンスパン前議長は記者会見を開かず、もちろんテレビのインタビューにも応じない。だから、議会証言などを除くと、肉声で金融政策を説明する機会がほとんどなかった。情報が瞬時に地球を一回りするIT社会だからこそ、メディアへの露出を極端に控えなければ、カリスマ性を維持でないと考えたのだと思う。自らの真意を市場に伝えたい時には、子飼いの米有力紙記者に情報をリークし、大きな記事を書かせていた。抜かれたライバル記者は憤慨するものの、「後追い」する以外に打つ手がなかった。

グリーンスパン時代、ITや住宅などをテーマにしたバブルが醸成され、株式市場は活況を呈した。やがてそれは崩壊し、米経済全体で“ツケ”を払うというサイクルが定着する。当時、日銀の首脳は「バブルを繰り返さない限り米経済は維持できないと、グリーンスパン議長は達観したのではないか」と分析していた。

■「負の遺産」処理に追われるバーナンキ議長、メディア対応は日銀流

2006年、バーナンキ氏が議長に就任すると、ほどなくサブプライムローン危機が発生した。さらに、2008年9月のリーマン・ショックでは世界経済に恐慌リスクが台頭したが、バーナンキ議長は三次にわたる量的緩和政策を断行し、「百年に一度の危機」を乗り切ってきた。就任以来、グリーンスパン前議長からの「負の遺産」処理に追われる日々だったように思う。

グリーンスパン前議長とは対照的に、バーナンキ議長はFOMCの直後に記者会見を開いて、言葉を慎重に選びながらも、金融政策を丁寧に説明する。議長就任前には「(デフレ克服のために)ヘリコプターからカネをバラ撒け」と日銀の政策を批判していたが、メディア対応では日銀流を採用している。

QE3が長引けば長引くほど、FRBの資産は一段と膨れ上がり、出口戦略が困難を極める。万一それに失敗すれば、ドルが威信を失い、基軸通貨の座から滑り落ちるかもしれない。バーナンキ議長に限らず、ワシントンの当局者はこうした危機感を共有しているように見える。
果たして、異次元金融緩和に踏み切った日銀はどうなのか。黒田東彦総裁は「(出口戦略に関しては)具体策については時期尚早である」と国会答弁しているが、当然、考えているはずである。バーナンキ議長は経済学者の良心と同時に、米国の国益を追求する信念を併せ持つ。だから、「日本の政策を支持している」と議会証言し、アベノミクスの事実上の円安政策にエールに送るのも、FRBが出口で保有資産を大量処分する際、日本勢に引き受けてもらうことが真の狙いかもしれない。

【お断り】本稿は筆者の個人的な見解であり、所属する組織とは一切関係ありません。

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