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『米QE3の狙いとは?』 ― 柳澤浩 氏

2012年10月16日(火)

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去る9月13日、米FOMC(連邦公開市場委員会)は、月400億ドル規模でエージェンシーMBS(政府系住宅貸付機関が発行する住宅ローン担保証券)を、買い入れ期間の期限を明示しない、オープンエンド方式で購入すると発表しました。バーナンキ・FRB(連邦準備制度理事会)は「QE3」開始を決めたのです。

この「QE3」に先だって行われたのが、2009年3月から2010年3月までの約1年間に1兆7、500億ドルの資金を供給した「QE1」と、2010年11月から2011年6月までの8ヶ月間に6、000億ドルの資金を供給した「QE2」でした。そして、「QE1」、「QE2」には共通の効果がありました。それは「株高」「ドル安」「長期金利上昇」がその政策採用期間に強まったと云う点です。

一方、実質GDPの伸び率に関しては、「QE1」期間には、確かにマイナス成長がプラス成長に転じており、大きな効果があったと考える事が出来ます。しかし、「QE2」期間には、成長率は小幅ながら鈍化してしまっており、必ずしも効果があったとは云えません。それでは、失業率はどうかと云えば、「QE1」期間には上昇が止まらず、「QE2」期間に漸く下げ始めたものの、下げのスピードは、FOMCメンバーやバーナンキ議長がしばしば指摘されている様に、「不快な程緩慢」でした。唯、流石に「遅行指標」と呼ばれるだけあって、「QE2」終了後も、緩慢ではありますが、一応、失業率の下落基調は続いています。

■QE1とQE2、「ヘリコプター・ベン」の面目躍如

元々「QE(量的金融緩和)」は、「通貨供給量を増やす政策」、つまり、市場全体に「お金をばら撒く政策」ですから、『デフレ払拭』が主たる目的です。この為、「期待インフレ率の上昇」をもたらし、結果的に、それが実際の「物価上昇」につながれば、成功だと云う事が出来ます。そして、実際に、「QE1」、「QE2」期間ともに、「期待インフレ率」、「PCE(個人消費支出)価格指数」ともに顕著に上昇しましたから、この面では、バーナンキ議長の思惑通りだったと結論付ける事が出来ます。バーナンキ議長は、以前、日銀に対して、「デフレ克服の為にはヘリコプターで紙幣を撒くべき」と提言した事から、「ヘリコプター・ベン」の異名を取っています。まさに、「QE」は「ヘリコプター・ベン」の面目躍如と云う事が出来ます。

又、「QE2」終了後には、「PCE価格指数」上昇率が高まった一方で、米国債利回りの上昇は限定的となった為、「実質長期金利」がマイナス圏に下がりました。これが昨年の第4四半期と今年の第1四半期のGDP成長率の押し上げを招いたと考える事も出来ますので、QE1、QE2はほぼ狙い通りの効果が得られたと結論付ける事が出来ます。

■「QE3」の背後に、今さらの「フィリップス曲線?」

さて、今年の春以降、米・PCE価格指数が急速に伸び悩む動きを見せています。その一方で、欧州ソブリン危機が一向に解決に向かわない事による米国債への「質への逃避」買いが強まり、米長期金利は歴史的な低水準での横ばい推移となりました。この為、米国の「実質長期金利」は、プラス圏に戻しており、その影響からか、今年の第2四半期には、「GDP成長率」の伸びが鈍化しています。

そんな中で、市場では「QE3」導入期待が強まり、その結果、今夏、長期金利が一時的に急上昇を見せ、利付国債の利回りからインフレ連動債利回りを差し引いて得られる「期待インフレ率」も急上昇を見せ、既に、リーマン・ショック後では、最も高いレベルに達しています。今後、「QE3」が「QE1」、「QE2」同様、更なる「長期金利上昇」を招く事となれば、「期待インフレ率」も更に上昇する事となるでしょうから、「インフレ懸念」につながる可能性も出て来ました。

それでもバーナンキ・FRBは「QE3」に踏み切った訳ですから、その狙いは、「QE2」までのものとは異なっていると考えるべきかもしれません。

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今回、「QE3」採用にあたり、最重要課題となっていたのは、「失業率の高止まり」問題です。何としても雇用問題の改善ペースを上げる事が、法令で定められた「FRBの使命」として喫緊の課題と認識された訳です。

ご承知の通り、経済学の教科書には、「フィリップス曲線」という理論が載っています。これは、「インフレ率と失業率のトレードオフ」と呼ばれるもので、「インフレ率が高くなると失業率が下がる」と云う、「経済学」上の一つの考え方で、20世紀後半の米国では、一時、妥当とみなされていたものでした。

今更「フィリップス曲線?」とも思ってしまいますが、現在の第一の政策目的が、「失業率の低下」をもたらす事であるとすれば、「インフレ」の面を犠牲にしても、「QE3」を行わなければならないとバーナンキ議長とFOMCメンバーは考えられたのかもしれません。

10月5日に発表された米・9月雇用統計では、失業率が7.8%に急低下し、2008年12月以来の低水準となりました。「QE3」の効果と呼ぶには早過ぎる低下ですが、もし、「QE3」が狙い通りの効果を上げ得ると仮定すると、米国の失業率は今後も低下基調を強める事となり、その一方で、「インフレ率」の上昇も顕著になり始めるものと思われます。そうなると、市場は、「金融緩和の解除時期を探る」動きに移行する事となり、外為市場でも、ドル安・円高トレンドにも大きな転換期が近づく事になります。今後は、これまで以上に、「失業率」と「インフレ率」との動きに更なる注目が集まる事となりそうです。

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