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『ECBは「打ち出の小槌」?』 ― 高野やすのり氏

2012年08月15日(水)

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■ドラギECB総裁「Believe me」

2012年7月26日、翌週8月2日のECB(欧州中央銀行)理事会が目前に控える中、ドラギ総裁はロンドンで開かれた世界投資会議で講演し、次のように発言しました。

「ユーロとユーロ圏は現在人々が認識しているよりもずっとずっと強い」「過去6カ月の進展は目覚ましい」「ソブリン債のプレミアムは容認できない水準に達している」「われわれの責務の範囲内で、ECBはユーロを存続させるためにあらゆることを行う用意がある。信じてほしい(Believe me)。それは十分な対応となるだろう」「これらソブリン債のプレミアムが金融政策の効果浸透の妨げとなっている限り、高利回りの問題はECBの責務の範囲内にある」―。

一連の発言の中でも、「ECBはユーロを存続させるためにあらゆることを行う用意がある。信じてほしい(Believe me)。それは十分な対応となるだろう」という部分が、世界中のメディアによって繰り返し報じられました。

その結果、市場関係者の間では「翌週のECB理事会では、中央銀行としての『一線』を踏み越えた政策が打ち出される」との期待が高まりました。あるエコノミストは「ECBが行動し終えた後には、ユーロを売り持ちにするトレーダーは1人もいなくなるだろう」と、ECBに対する強い期待を述べていました。

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こうした期待感を背景に、スペインやイタリアなどリスク・プレミアムが大きくなっていた国債が買われ、ユーロ相場も上昇、ユーロ/ドルはドラギ総裁の講演前日25日の引け1.21台半ばから、26日の引けでは1.23台まで上昇しています。

翌週のECB理事会を前に市場の期待感は膨らみ、「少なくとも国債購入プログラムであるSMP(証券市場プログラム)の再開は間違いないだろう」という雰囲気が蔓延しました。このSMPの再開に対しては、ECB最大のスポンサーであるドイツ連銀が従来から強い反対の立場を貫いていたため、これまで「再開は難しいのでは」と見られていました。

しかし、ドラギ総裁の講演での力強い言葉と、理事会前に同総裁がドイツ連銀のバイトマン総裁と意見交換をするとの報道により、SMPについては単なる再開にとどまらず、「財政ファイナンス」批判をも顧みないような規模での実施に対する期待も持たれました。また、利下げやLTRO(長期資金供給オペ)の実施、ESMに対する銀行免許付与の検討などもあるのではないかとの見方が浮上しました。

■ところがECB理事会では・・・

ドラギ総裁の講演の翌週、ECB理事会が予定通り開催されました。そこで決定されたことは、すべての政策金利の据え置きというものでした。この段階で既にやや失望感が生じていたものの、大方の期待はドラギ総裁が理事会後に臨む記者会見に集まっていました。

会見でドラギ総裁は「ユーロ崩壊に対する懸念に関連するリスク・プレミアムは容認できず、根本的に対処する必要」「ECBは買い切り公開市場操作を実施する可能性」を指摘しました。
その一方で、「欧州各国政府はEFSF(欧州金融安定化機構)/ ESM(欧州安定メカニズム)を債券市場で稼動させる準備をする必要がある」として、ECBが国債を買うのは当事国がEFSFに対し買い入れを要請した上で、EFSFが買入れを実施することが条件だとしました。

また、「EFSFによる支援が必要かどうかを決めるのは政府」「ECBは政府の代わりはできない」「ECBは向こう数週間で手順を作成する」として、即時の買い入れがないことを示しました。さらに「ドイツ連銀は債券購入に関し態度保留」と述べたことで、ドイツ連銀との対立を印象付けています。

一連の発言に対し、公開市場操作実施の可能性を述べた前半部分ではユーロ買いが強まりました。しかしその後、その買入れ時期や方法、規模が何ら示されなかったこと、またドイツが依然として反対し、そのことをドラギ総裁が公にしたことなどから失望感が広がり、ユーロ売りが強まりました。

ドラギ総裁の会見で示されたのは、これまでのSMP(証券市場プログラム)とは別の、短期債を中心に購入する新規プログラムを立ち上げる、というものでした。ECBの本来の責務である金融政策では短期金利をそのターゲットとしていますので、短期債中心というのは至極真っ当な政策です。

ただし、このプログラムで国債の買い入れを行うには、当該国がEFSF/ESMに支援を要請し、この要請をユーロ圏政府が了承して、EFSF/ESMが国債の買い入れを始めることが条件です。しかし前述したように、その開始時期や方法、規模などが何一つ示されていません。さらにドイツが態度を保留していることから、このプログラムが実際に実施されるとしても、それまでにはまだまだ越えるべきヤマが幾つもあります。そして実施されたとしても、支援要請が必要なことや、買い入れが短期債中心であることなどから、市場の期待を満たしているとは言えません。

■ECBは「打ち出の小槌」にあらず

今回発表されたプログラムは、一部の市場関係者が期待した、中央銀行としての「一線」を踏み越えた政策ではありませんでした。

ECBは中央銀行として、流動性の供給や金融市場の安定を目的として短期債の買い入れを行います。一方、各国の財政問題解決のための長期債の買い入れは、政府の決定により政府の機関であるEFSF/ESMが行うべきだという区別を明確にしたわけです。すなわち、ソブリン・リスク問題の最終的な解決策をECBという「打ち出の小槌」に求めようとする一部の目論見に対し、ドラギ総裁ははっきり「No」と言っているのです。

今回の決定が実現すれば、欧州ソブリン危機の解決の進展に役立つことは確かでしょう。ただ気になるのは、ECB内でのドイツ連銀とその他の対立をドラギ総裁が公にしたことが、今後のECB運営の中でどのような影響を与えるのか。あるいは、新たな火種になる恐れはないのかということです。もっともこの件に関しては、孤立を恐れるドイツの政治家がドラギ総裁の方針を支持するような発言を行っており、最終的にはドイツ側が歩み寄る可能性が出てきています。

現段階では、欧州ソブリン危機が解決に向かうかどうか全く不透明と言わざるを得ません。ただ、自国の利益をある程度犠牲にしてもユーロ圏全体の利益を守るという方向で、ドイツを含む加盟国全体の連帯が強まることが非常に重要な条件になると言うことはできます。

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