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『ギリシャは「秩序あるユーロ離脱」が望ましい(1)』 ― 武藤敏郎氏

2012年06月07日(木)

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欧州債務危機が深刻化する中、世界的に株安が進み外国為替市場では円高が再燃している。欧州情勢の視察から帰国した武藤敏郎・大和総研理事長(元財務事務次官・日銀副総裁)にインタビューを行い、ギリシャ危機の解決策や日本の財政赤字に対する処方箋などをうかがった。

― 欧州視察では、ギリシャ危機・ユーロ問題に関して現地の声をどう受け止められましたか。

フランスのオランド新大統領は、予想以上に安心感をもって迎えられているようです。成長を重視しながらも、緊縮財政に反対しているわけでもなく、財政再建のスケジュールを遅らせるかどうかという話になっています。EU(欧州連合)ではドイツ、フランス以外の主要国もオランド大統領の方針を受け入れるような発信をしており、さすがは、欧州大陸の外交巧者同士のやり取りだと感じます。また、サルコジ前大統領に比べると、オランド大統領のほうが日本との関係を重要視するのではないかと思います。

― ギリシャ危機に関しては、「ユーロ離脱」の表現が各メディアで目立つようになっていますが。

そのように思います。私の考え方も少し変わってきました。前回の総選挙までは、「ギリシャ離脱はユーロのためにならないし、ギリシャのためにもならない」と考えていました。すなわち、(新たな緊急融資制度である)ESM(欧州安定機構)をしっかり作り、資金繰りは欧州中央銀行(ECB)が行いながら、ギリシャが財政再建の努力を続けて時間をかけても再建を目指していく――。それが、ベストのシナリオだと思っていました。

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しかし、6月17日に実施されるギリシャの議会再選挙の結果次第ですが、仮に急進左派連合(SYRIZA)中心の政権が誕生するというシナリオを描いてみると、新政権は緊縮財政に消極的だが、EUの支援については多くを望むということになりそうです。

仮に、EUがポルトガルやスペインへの危機波及を恐れてギリシャに譲歩して支えるという展開になっても、 ギリシャ自身が財政再建をやらなければ問題は解消されません。最後はデフォルト(債務不履行)に陥ってしまうというリスクを否定できないわけです。

そうなった場合、ギリシャをEUから追い出す手があるかというと、そういう規定はないようです。しかしながら、外交の中でギリシャ自ら出ていくという可能性はあります。EUを脱退するなら、当然ユーロからも脱退することになりますから、これはギリシャが旧通貨のドラクマに回帰することを意味するわけです。

― ギリシャがユーロから脱退し旧通貨のドラクマに戻る場合、どのようなプロセスをたどると予想されますか。

脱退する時にまず、マーケットアタックが起こる可能性があります。この2年間でギリシャの金融機関から預金がおよそ3割流出しています。つまり現状であれば為替リスクがありませんから、ギリシャの富裕層はドイツやフランスなどEU域内の銀行に預け替えることができます。富裕層は「近い将来、ギリシャがドラクマに戻るかもしれない」と考え、貨幣価値の強制劣化を回避しようしているわけです。
  
預金が3割も流出しても、ギリシャの銀行は資本注入を受けて何とか持ち堪えています。なぜ資金繰りに支障をきたさないかといえば、EU域内のインターバンク取引でドイツ連銀などがギリシャの金融機関に相当な額のユーロを貸し出しているからです。ドイツの銀行のギリシャの銀行に対するエクスポージャーは、この2年間で3倍程度に急増しています。

ギリシャが行き詰まってしまうと、ドイツの銀行も急速に資金を引き揚げていくはずです。その結果、ギリシャの民間金融機関は破綻してしまいます。ギリシャがいつになっても財政再建に取り組まないなら、ECBも貸し出しを控えることになりますから、政府自体がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性もあります。こうした事態は、たとえギリシャがユーロに留まっていても起こり得るわけですから、ギリシャはドラクマを復活させざるを得ないのではないかと思われます。

ギリシャ中銀にはユーロ紙幣を刷る権限はありません。それでは「何ができるか」というと、ドラクマを刷るしかありません。開発途上国の経済には「二元通貨制度」が存在しています。すなわち、「公式通貨はユーロでも、実際にギリシャ国内で流通しているのはドラクマ」という事態が起こり得るわけです。そうなると、事実上のユーロ離脱に等しいでしょう。このようにマーケットに押し出されていく形で、止むを得ずギリシャがドラクマ経済に回帰していくという可能性は否定できないと思います。

このように考えていくと、「今の時点でギリシャに対する処方箋に何があるか」と尋ねられれば、私がかつて考えていたことではなく、「秩序あるギリシャのユーロ離脱」がベストではないかと思います。ドラクマは徐々に対ユーロなどで減価していきますから、ギリシャに輸出余力も付きます。

もし、ギリシャがユーロに留まったまま輸出競争力を高めるなら、賃金の切り下げを避けられません。それよりは、ドラクマに移行して対外競争力を回復させながら、経済再生の可能性を模索するほうがギリシャ国民にとって好ましいのではないでしょうか。

― ギリシャ危機を乗り越えて、EUは財政統合を目指して進んでいくのでしょうか。

あくまで可能性としては、ギリシャが独力で財政再建できない場合、ドイツやフランスから財政援助を受けることも考えられます。これは、日本という一つの国家の下で東京が地方に財政支援するような考え方です。しかし、EUでは国家主権がバラバラであるため、その実現は非常に難しいと思います。

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何よりもまず、EUはギリシャ危機のポルトガルやスペインへの波及を阻止しないといけません。ギリシャの「秩序なき離脱」は波及の可能性を強めてしまいます。しかし「秩序ある離脱」であれば、例えばESMを大量に用意できるし、ドイツやフランスの銀行であれば事前に引き当ても可能でしょう。場合によっては、公的資金で普通の銀行は潰さないという施策を講じてもよいのです。何れにしても、金融システム安定の維持が重要になります。


その上で、EUは財政統合に向けて第一歩を踏み出すべきでしょう。厳密な意味での財政統合は、すぐにはあり得ません。しかしながら、ドイツは嫌がるかもしれませんが、いわゆる「ユーロ共同債」の発行などの手段は考えられるでしょう。

すなわち、
(1)ESMの機能強化
(2)金融システム不安を回避するため、金融規制監督当局や預金保険制度の一元化
(3)財政統合の第一歩として、ユーロ共同債を発行
―というプロセスが好ましいと考えています。

もしギリシャがユーロに留まり続け、デフォルトするようなことになれば、大混乱は必至です。そうなると、日本にとっても影響が大きくなります。円は急騰するでしょうし、輸出が激減して株価も下落することになります。日本のためにも、ギリシャの「秩序ある離脱」が望ましいのではないかと思います。

>>この続き『ギリシャは「秩序あるユーロ離脱」が望ましい(2)』へ

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