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『予想以上の効果を発揮したECBのLTRO』 ― 柳澤浩 氏

2012年02月14日(火)

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昨年12月8日に開催された欧州中央銀行(ECB)の金融政策理事会に於いて、かなり思い切った新政策が打ち出されました。

まずは、11月3日の理事会に次いで2カ月連続で政策金利を引き下げました。リファイナンス・オペ金利と呼ばれる市場への資金供給オペの適用金利を0.25%引き下げ、年1%としたのです。2点目は、預金準備率の引き下げです。これまでの2%を1%に変更し、銀行の信用創造拡大を促しました。
そして第3の新機軸が、今回の政策の「目玉」ともいうべきリファイナンス・オペの期間延長、すなわち期間3年のLTRO(長期リファイナンス・オペ)の導入でした。ECBは従来、最長13カ月のリファインス・オペを行っていましたが、これを一気に3年まで延長した上に、供給額も無制限としたのです。
さらに第4の新機軸として、このリファイナンス・オペに参加するための担保要件も緩和しました。所定の条件を満たした住宅などの資産担保証券(ABS)については、格付けの最低基準をシングルAまで引き下げるほか、一時的な措置として各国中央銀行が所定の条件を満たした貸出債権などを担保として受け入れることを認めたのです。
また、当時最も緊張の高まっていたイタリア市場に対しては、さらなる特別措置が打ち出されました。何と、大手市中銀行の発行している金融債にイタリア政府が保証を付与することにより、そのほとんどがECBの担保要件に見合う債券と化したのです。

■空前の規模に達した昨年末の第1回LTRO

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 そして12月21日、ECBは第1回目の3年物LTROを実施しました。金利は政策金利である1%、金額は無制限で応じるとしました。するとドラギ総裁の思惑通り、資金繰りに緊張を強いられていたイタリア、スペインの銀行を中心に523の金融機関が、合計で4,891億ユーロに上る資金をこのオペにより調達しました。

当日朝の段階では、市場でのオペ応札額予想は2,900億ユーロ強(約30兆円)程度、最大でも4,000億ユーロ(約40兆円)などと喧伝されていましたが、実際には空前の50兆円規模に達しようかというものになりました。

この調達資金がECBの当座預金口座にそのまま置かれていたため、金融機関にとっては単なる「安全装置」との見方も少なくありませんでした。ただ、当時のイタリアやスペインの3年国債の利回りが6%を超え、1年以内に満期を迎える短期国債の利回りですら1%を上回っており、債券市場へ徐々にこの資金が向かうだろうと予想できました。

2011年末までは、この時期が欧州のほとんどの銀行の決算期に当たっているほか、年越えの資金繰りへの不安感から、このオペ資金は使われずにそのままECBの当座預金に留め置かれていたのです。

■年明け以降、システミック・リスク懸念は大幅に後退

しかし年明け以降、まずは短期国債への投資という形で資金が市場に流れ始めました。また、為替スワップなどを通じてこのオペのユーロ資金がドル資金調達に使われるようになり、1月6日以降はドルの3カ月物LIBOR金利(ロンドン銀行間出し手金利、短期の代表的な指標金利)が低下し始めました。昨年7月以来、ずっと上昇を続けて来たユーロドル金利(=米国外で取引されるドル金利)もついに下落に転じたわけです。

それ以来約1カ月を経て、この資金循環による金融市場の安定化は顕著なものとなってきました。今や、フランス、イタリア、スペインの10年国債金利も大きく低下し、一時の緊迫化した状況は払拭されています。

この3年物LTROは2月29日に第2回目が実施される予定であり、再び多くの金融機関から旺盛な資金需要を示すと見られています。これが欧州金融市場に一段の安定化をもたらし、システミック・リスクへの懸念は更に大きく後退すると予想されます。

■バーナンキ米FRB 議長も「QE3」を辞さない姿勢

 一方、1月25日に行われた今年最初の米連邦公開市場委員会(FOMC)に於いて、「異例の低金利を2014年終盤まで継続することが正当化される」と明言されました。そして、バーナンキ米FRB議長は、必要とあれば「QE3(量的緩和第3弾)」に踏み切る考えも示唆しています。また、議長は2月2日の議会証言でも、「FRBは欧州の状況を引き続き注視し、米国の金融システムや経済を保護するため利用可能な全ての措置を取る」と述べ、欧州発の金融市場の動揺への目配りを忘れないという決意表明も行っています。

こうしたことも、世界的な金融市場の安定化を強める働きをしており、投資家の「リスク許容度」の下支えに役立っているようです。欧米の金融当局が市場の信用リスク拡大を抑制する方策を続々と行い、それも株式市場の堅調な地合形成にもつながったと思われます。

■当面、深刻なリスク要因はギリシャ情勢だけに

ECBが実施したLTROの効果などにより、これまで(EU、IMF、ECBという)「トロイカ」から支援を受けてきたギリシャ、アイルランド、ポルトガル以外に飛び火する可能性が抑えられました。

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当面、最もリスクの高い要因はギリシャ情勢だけという状況になっています。このため、ギリシャ国債のPSI(民間部門関与)による債務交換問題が決着してトロイカとの第2次支援策も合意されれば、そのプログラムに基づく資金援助が行われ、ギリシャの「無秩序なデフォルト」は回避できます。

当初、LTROによるECBの資金供給策に対して、「単なる時間稼ぎに過ぎない」との批判もありました。しかしながら、既にEU首脳会議で合意されている財政安定協定の条約改定や、恒久的な支援機構となるESM(欧州安定化メカニズム)創設などが実現するまでには、まだ数カ月は必要です。

このため、「時間稼ぎ」といえども「重要な意味を持つ」と認識され、一部では、「ドラギ・マジック」とも呼ばれているLTROは評価すべきものだと思います。この効果により当面は、ユーロ崩壊などのリスクは著しく低下したと考えられるし、ユーロの下落トレンドに変化をもたらすきっかけとなっている可能性もありそうです。

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