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『世界経済は「規律」を取り戻せるか』 ― 稲葉延雄氏

2011年12月14日(水)

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欧州債務危機の深刻化に伴い、「人類の壮大な実験」と謳われた統一通貨ユーロは存亡の危機に直面している。果たして、政府や企業、投資家はディシプリン(規律)を取り戻し、ユーロ制度は生き残ることができるのか。元日銀理事で国内外の金融・経済情勢に精通しているリコー経済社会研究所の稲葉延雄所長にインタビューを行い、現状の分析と今後の見通しを尋ねた。

― 欧州債務危機の現状をどう見ていますか。また,欧州連合(EU)はいかにして危機を乗り越えようとしているのでしょうか。

欧州では、「分裂を回避するために何をすべきか」という重要な段階を迎えています。岐路に立たされていると言ってもよいでしょう。このままの体制でいくのか、あるいは(通貨統合から発展して)財政統合というしっかりした形になるのか。それとも分裂含みになっていくのか、識者の意見も様々です。ただ、金融市場では「不測事態を防ぐためにも、分裂は避けるべきではないか」という声が強く、それを軸に欧州各国が模索を続けているところだと思います。

今回の危機は、「国債バブル」の崩壊です。ですから何が大事なのかというと、「イタリアなど南欧諸国の国債を購入している投資家の信用をどうやって回復するか」ということになります。つまり、国債を発行している政府がデフォルト(債務不履行)を起こさないということを投資家に信じてもらわなくてはなりません。その基本は財政再建であり、具体的には増税や歳出削減になります。

けれども、財政再建策が経済にとって厳しすぎれば、財政状態はむしろ悪化してしまいます。このため、「EU加盟国が問題国にどれぐらい支援をすべきか」という議論が起こっているわけです。場合によっては、投資家がヘアカット(債務削減)に応じて債権の一部を放棄してまで支援する必要があります。

しかしながら、加盟国による支援や投資家のヘアカットが行き過ぎれば、今度は問題国にモラルハザード(危険行動の加速)をもたらしてしまい、財政が引き締められることなく緩んだままになる恐れがあります。財政再建が“絵に描いた餅”になるわけです。

一方、金融市場は非常にイライラしており、「非常時なのだから、欧州中央銀行(ECB)が国債を買い取るべきだ」という空気が強まっています。中には、「無制限に買い取ることこそ、“最後の貸し手”としてのECBの役割ではないか」という極端な声も聞かれます。しかし、国債の買い取りが行き過ぎれば、これもモラルハザードを招きます。たいへん難しいことですが、財政再建とモラルハザードの折り合いをきっちり付けなくてはなりません。

― バブル崩壊後に日本が経験した「失われた20年」と、現在の欧州危機には類似点がありますか。

類似点と相違点の両方があると思います。共通するのは不良債権処理です。バブルを起こした後、その処理には非常に長い時間を要します。問題が少しずつ明らかになり、それを認識した上でどうやって処理するかを考えるまでに時間が掛かるのです。その過程で経済は長く停滞が続きます。「結局、バブルは高く付く」という教訓が日本と欧州の共通点になります。

一方、相違点もあります。欧州の場合は「国債バブル」という要素が加わっていますので、問題国政府自身の規律回復を含め、財政をどうやって建て直していくかという難題にも取り組まねばならないということです。

― 欧州の債務危機は、通貨統合の難しさも浮き彫りにしていますが。

そうです。「通貨統合は高く付く」という教訓も得られたように思います。当初、EU域内では「通貨統合によって為替相場が安定すれば、経済に大きなメリットをもたらす」と期待されていました。世界的にも、「為替リスクが低下するのではないか」と見られていました。

確かに域内の為替変動に伴うコストは軽減されたものの、一旦危機に陥ると、問題国への支援という想定外のコストが発生したわけです。欧州が震源地となり、世界的にもかえって為替相場のボラティリティー(変動率)が高まってしまいました。今後、アジアで最適な通貨の在り方を議論する際にも、しばらくは(「アジア版ユーロ」といった統一通貨構想が)下火になってくるのではないでしょうか。

― そのほかに今回の危機に大きな特徴はありますか。

欧州の混乱なのに、日本では円高になり日本経済全体が揺さぶられています。日本企業はコスト削減に歯を食いしばって取り組んでいるのに、たった1円の円高がその尊い努力を吹き飛ばしてしまいます。本来、貨幣を中心とする市場経済は人々の生活を豊かにするはずです。ところが逆に、「マネーが日々の生活を脅かしているのではないか」というムードが世界中で強まっています。荒っぽい市場調整の動きに対し、人々が辟易し始めたと言ってもよいかもしれません。各国で繰り広げられているデモはそれを反映しているのでしょう。

だからこそ、市場経済の持つダイナミズムなどの特徴を認識し、どうやってそれを良くしていくのかを考える必要があります。そのポイントは、全ての市場参加者がしっかりと「規律」を守ることになります。リーマンショックの例を持ち出すまでもなく、「強欲」だけで経営すれば企業は必ず破綻に向かいます。(オリンパスで発覚した)「損失隠し」を行えば、必ず糾弾されるのです。

政府部門も同じであり、南欧諸国がディシプリン(規律)を守っていれば今回の危機は起こらなかったでしょう。日本も例外ではなく、今のような巨額な財政赤字をいつまでも続けるわけにはいきません。世界中で規律について改めて考える必要があります。それこそが、リスクを最小化するのではないかと思います。

― 円高傾向が続く為替相場の現状をどう分析していますか。

政府債務問題の解消が遅れている米国や「国債バブル」崩壊で混乱が続く欧州と比較される中で、その反対効果として円高になっています。ですから、日本から見て有効な施策をなかなか講じることができません。相場が乱高下した場合、市場介入はできるにしても…。大変イライラする状況ですが、ここは凌いでいかなければなりません。

― 企業経営は円高の持続を前提にすべきでしょうか。

止むを得ません。既存の製品を日本国内で効率的に生産できないのなら、海外に出て行かざるを得ません。適地生産がもたらす収益を日本に還流させるほうが望ましいと思います。

その一方で、日本企業はこれまで通り世界が求めるニーズに対し、新しい製品やサービスをぶつけていかなくてはなりません。1ドル=360円の時代から「世界初」の製品やサービスをずっと供給してきました。円高を克服しながら、価格競争に打ち勝ってきたのです。エネルギーや環境、医療など、今でも日本企業が強さを発揮できる領域はたくさんあります。

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