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ディーラー烈士伝

「儲けるよりも勝つことを目指して」 ―大前雅生 氏 [中編]

2011年10月19日(水)

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(前編はこちらから)

■イケイケから初めての挫折

 ソジェンは、為替リーグの中でも最下位に属していて、それほどアクティブにディーリングをはしていなかったが、この頃から強化し始め、僕は、日本人は絶対勝てないと言われていた通貨、ドイツマルクの担当になった。案の定、自分も最初は全然勝てなかった。外国人の感覚で物事を考えないと勝てないのだ。アメリカで暮らしていたから、外国人の考え方をある程度理解できる土台はあったので、その感覚に順応するのは早かった。

やり始めて2年目ぐらいで、ゴルバチョフが失脚してマルクがものすごく動いたり、ポンド危機もあって、欧州通貨はものすごく注目されたときで、僕はそれに乗っかってデビューしてしまった。タイミングが後押ししてくれたこともあり、弱冠22〜23歳で、大きな収益をあげられるようになった。そうなれば、若いから、天狗になってしまう。

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しかも、さらにもっと舞い上がってしまうことが起こった。それは、BHF銀行東京支店長の堀内昭利さんからのスカウトだった。仁義に厚い堀内さんらしく、僕の上司に交渉しに銀行まで来られた。業界で有名な方からお声が掛かったのだから、俺もこれでビッグディーラーの仲間入りか、なんて勘違い。意気込んでBHFに移籍したはいいが、堀内さんとは、相場に対する考え方が根本的に全然違っていた。

それまで僕は、会社のお金で売れ買えと騒いでいることが収益につながり、それがディーラーだと思っていた。もちろんそれはそうなのだけれど、堀内さんの場合は、相場師であって、その辺の甘ちゃんのディーラーなどではないから、考え方や視点がまったく違う。

最初から、「おまえ、そんなことやって儲けを残しても、3年で消えるよ。プロとしてやっていくんだったら、おまえが今までやってきたやり方を全部捨てなきゃ駄目だ」と言われた。イチからやり直し。すると勝てなくなった。そして怖くなった。チャーリー中山さんからはオフィスに遊びに来るたびに、「寝ている暇があったら相場をずっと見ておけ!」と怒られたりして、厳しいスパルタ教育をされている内に、自律神経失調症になってしまった。

堀内さんの下で働くようになるまで、学生時代から、結構イケイケで来ていたので、初めての挫折はことさら堪えた。まだ24歳なのに、白髪になり、奥歯が抜けてげっそりと痩せた。

堀内さんに話すと、胸のポケットから薬と水晶玉を取り出して「自分もそうだった。これを持っていけ」と渡してくれた。ひどいめまいをこらえて、なんとか出社し堀内さんとマンツーマンで相場のことだけを話す生活を続けていたら、何かのきっかけで勝てるようになり、自分のスタイルが出来上がっていくのと並行して、病気は回復していった。BHFでは堀内さんの他に、長尾数馬さんにも大変お世話になった。「ディーラーバカじゃだめだ、ちゃんと人生のビジョンを持て!」と口酸っぱく言われた。

■「負け」は自分を見つめ直して

 相場において、負けるというのはゲームだからつきものだ。負けの原因というのは必ずあって、冷静に自分自身を見つめ直せば、実は簡単なことで修正できたりする。そして、謙虚さや素直さも必要だ。傍から見ていれば、その人がうまくいってないというのはよくわかる。それを誰かが忠告してくれたとしたら、自分が受け入れられなければ絶対に直らない。これができるときは負けない。僕の場合は、自分の手法が間違っているのではなくて、自分の人間としての姿勢が間違っているのだということに気がついたりもしたのだった。

うまくいかないときというのは、基本的にあまり深追いはしないようにしている。好きな女性に好きだから付き合ってくれとしつこくすると、逃げられてしまうように、相場で儲けたい儲けたいと思ったらなかなか儲けられない。逆に、まあ、これで儲けられたらいいね、くらいの感じでできるときは、思いのほか収益が上がっていたりする。欲を出すなということなのだ。

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どの相場で、どの程度の力を出すのか、例えば100%なのか30%なのか、見極めは初心者の段階ではなかなか難しいことで、そこに至るまでの授業料を払って、その結果に行き着くしか方法はないようだ。ただ、最近は、休んだからといってまたやり始めてもビクビクしてしまうのだったら、いっそのこと、勝ち続けるまでやらなくては駄目だなと思う気持ちも芽生えてきた。このことは、一生の課題としたい。

この時代からさらに人に助けられていく。BHF東京支店が閉鎖される前に、お前はまだ若いからと、堀内さんの友人でHSBCミッドランド銀行(以下、HSBC)ニューヨーク支店の有名なディーラー、トニー・ブスタマンテさんを紹介してもらい、面接に行った。僕はトニー番“で、電話でいつも彼に怒られていたが、ジャパニーズ・サン(日本の息子)”と呼んでくれた、温かい人だった。彼は、キューバ移民でアメリカの永住権を取るためベトナム戦争に参加したという経歴を持つ。

オファーをもらいHSBC東京支店に入行することになった。HSBCは英系の大手銀行なので、ポンドがらみのフローはおそらく世界一、当然アジアでも一番のマーケットメーカー(なんせフローの8割以上が見えてしまう)だった。やっとメジャーリーグの仲間入りできたと思った。

当時のデスクのチーフは、現在ステート・ストリート東京支店の支店長である柳澤義治さんだった。柳澤さんも以前はBHFに籍を置いた経歴もあり、親近感のある先輩として指導して頂いた。その後まもなく柳澤氏はステートに移られたのだが、在籍中に彼から教わった事などは今でも教訓として日々のトレードに生かされている。

■クライシス様様

 HSBCに移籍して程なくするとアジア危機とロシア危機が相次いで発生した。自分のキャリアアップにつながったのがこのロシア危機だった。たまたま円ディーラーが休みに入っていて、自分がポンドデスクで最もポジションを持っているので、円もカバー(ポンド円のフローなどもあるので)してあげるよ、と言った途端にロシア危機が始まり、ドル円は131円から10数円急落した。

ピンチヒッターだったのに、このチャンスで最高記録の収益を上げてしまい、次の年にチーフの座に昇格してしまった。まさにクライシス(危機)様様だった。

この頃は、日本から外銀がどんどん撤退していて、HSBCも本店の香港がアジアセンターなので、ディーリングはそこに集約することになり、中国返還がされたばかりで大きな変化が起こりつつある香港に転勤させられることになった。チーフディーラー(G10の通貨を担当)が日本人なのは極めて異例で、30人ほどの外国人の部下を統括した。

2年後に、チームごと真隣にある、HSBCと並ぶ香港ドルの発券銀行であるスタンダード・チャータード銀行に引き抜かれた。その後、モルガンスタンレー証券の香港に移籍する。モルガンスタンレーは大きな会社だったし、相場を張るリスクも今までの何倍にもなったため、本当に自分のディーリングが伸びたときであり、収入も一番多かった。

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香港では自分のキャリアのピークをつけただけでなく、考え方も変わった。それまでは自分がディーリングでナンバーワンになるというためだけにやっていたけれど、それだけではなくて、中国のポテンシャルを肌で感じさせられたし、東京では決して会えないような人のレンジに大いに刺激された。自分のキャリアも含めたこれからの人生をどうやっていこうか考えさせられた場所だった。

現在も、香港やシンガポールからいろいろと仕事のアプローチをいただいているので、大好きなこの場所にいつかまた戻ることも将来の選択視のひとつだと考えている。

傍から見たらジョブホッパーと言われてしまうのかもしれないが、僕の場合、転職は人との付き合いであって、ヘッドハンターを通したこと一度もない。人との出会いでその人を信じてついていった。僕には有名大学を出ているというような売りがまったくないので、お声を掛けてくれた方には、感謝の気持ちでいっぱいで、それに応えるべく、がんばって来たつもりだ。

(後編に続く)

*2011年09月05日の取材に基づいて記事を構成
 (取材/文:香澄ケイト)

【前編】常に“チェンジ”を求めて
【中編】人との出会いがキャリアを構成
【後編】サムライとしてNo.1でいたい

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>>「The FxACE(ザ・フェイス)」インタビューラインアップへ





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プロフィール

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TheFxACE(ザ・フェイス)企画チーム / TheFxACE

為替ディーラーのご経歴を持つ方々に、ご自身の生き様や相場に対する考え方などをお伺いしていきます。

[取材/文]
香澄ケイト(かすみ・けいと)/外為ジャーナリスト

米国カリフォルニア州の大学、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国後、外資系証券会社で日本株/アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事。退職後、株の世界から一転して為替証拠金取引に関する活動を開始し、為替サイトなどでの執筆の他にラジオ日経への出演およびセミナー等の講師も努める。

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