多極化する金融世界
取引所FXが変わりつつある現状とその思うところを書いてみた
2011年08月16日(火)

GMOクリック証券にて、取引所FXにおける月間の取引高に関して、ここ数ヶ月200万枚以上を突破している。私は常々、取引所FXは短期売買には向いていないので、かなり微妙だと思っていたのだが、1枚あたりの片道手数料が(キャンペーン抜きで)50円まで下がってくると話は別である。
今回はこれに関連して、(取引所FXに関して)思うところをいくつか考察してみた。
■どうして取引所FXは短期売買に向いていないのか?
そもそも的なことであるが、どうして取引所FXは短期売買に向いていないのか?それは店頭FXとは異なり、手数料が発生するからで、いくら税制優遇があったとしても、繰り返し行われる売買の手数料と税金を比べると店頭FXのほうが有利になることが多いからである。これはスプレッドとして考えると明らかで、例えば取引所FXの手数料が1枚あたりの片道手数料が100円で、スプレッドが1銭だったとすると、往復のコストは300円となる。それに対して店頭FXはスプレッドのみなので、これも1銭だったとしても往復のコストは100円で、その差は200円となる。これを取引回数と取引枚数を考慮すると、それがどのような結果となるかは想像するに難くないと思う。そういった現実があったので、取引所FXは短期売買には向いていないと思っていた。それは今も変わらない。
■店頭FXにおけるスプレッド縮小による流動性の低下
これは前回も言及した部分になるが、今やドル円でのスプレッドが0.8銭というのが当たり前になりつつある。スプレッドの縮小は流動性の低下にもつながるため、ある程度の制限が必要となってくる。例えば、1日の取引上限やスリッページ等である。特に取引量の多いユーザーほどそういった制限に引っかかってくるので、それが取引会社への不信感につながっているのもあるだろう。こうした一連の“見えない流動性”のリスクもユーザーが負っている現実があるとすれば、流動性の確保という観点で取引所FXに目を付けるのは面白いのかもしれない。
■取引所FXのコストを徹底的に削減
取引所自体のコストも噂によれば、ある程度安くなったのだろう。推測するに1枚あたり片道35円から25円くらいだ。基本は35円だが、ボリュームディスカウントがあるのだろう。その先は関係者ではないので知らないが、事実だとすれば良い傾向である。GMOクリック証券の場合は、取引システム自体も自社で内製化しているため、トランザクションによるコストはほとんど発生しないと考えたほうが良いだろう。あるとすればデータセンターやサーバー等の保守費用くらいだ。人件費?この場合は他で吸収していると考えるべきだろう。となると、粗利益が1枚あたり片道20円くらいになる。あまり儲けがないと思うが、それが上述の課題をクリアするためだとすれば、それなりの儲けだと私は思う。
■来年からは店頭FXの税制が変わる
取引所FXにとってあまり嬉しくないニュースがこれだ。せっかくの優位性がなくなるため、彼らは試行錯誤を繰り返していると思うが、私の中では結論は出ていて、それに向けて活動すれば良いと考えている。店頭FXの流動性は今後も改善する見込みはなく、約定レートが劣化するのは明らかな点で言えば、取引量の多いユーザー中心の市場と割り切ってしまえば良い。レートだけではなくスワップの透明性や信頼性を優先したいユーザーは引続き取引所FXに残るだろう。取引量が多いユーザーとほとんどないユーザーは取引所FX。取引量がほどほどあるユーザーは店頭FXに分けられる。この図式は今とそんなに変わらないと思うのは私だけだろうか。
Posted by 葛木茂樹