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ディーラー烈士伝

「サラリーマンディーラーの一分」― 河村 正人 氏 [後編]

2010年07月28日(水)

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(中編はこちらから)

■プラザ合意で売りに徹す

プラザ合意の4ヶ月程前に、為替課長になったばかりだったが、9月まで全然儲かっていなかった。自分はポジションをつくれば、必ずドルを売っていた。ドルを売っては、バーンと踏み上げられて、それでまた買い戻してと、ポジションを取る度に損失を重ねていた。

何か起こりそうなムードがマーケットには充満していたから、自分のセンサーは全開だった。だからこそ、プラザ合意に関する新聞の小さな記事を見逃すはずなど有り得なかった。なぜ緊急にG5が行われるのか。もしかするとドル高是正のために協調介入が実施されるのかもしれない。ドルの高所恐怖症がマーケットに広がりつつあるときに介入すればドルは間違いなく下落する、と踏んだ。もうドル売りしかない。

秋分の日に部下にも動員をかけて、休日出勤し、早朝から売っていったのだが、急にドル買いが出てきてしまった。待ってましたとばかりの輸入会社のドル買いだった。10円下がって5円ぐらい戻る。この時点では、本当にドル下げをやるかどうかるかどうかわかっていない人が多かったのだ。自分も挫けそうになったところで、日銀の担当者の訪問を受けた。

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その人が文書を渡して「よろしくお願いします」と言う。「よろしくお願いしますって、介入のお手伝いをしろということですか?」と訊くと「そういうことです」との返事に、日銀は本気でドルを下げようとしていることがうかがえ、勇気100倍になった。

何十年に一度かもしれないチャンスの波に、乗っていくしかなかった。乗れなかった人はほとんどいなかったと思うが、遅く乗っても十分間に合った。しかし、最初は思ったようには簡単にドル円は下がらなかったから結構きつい思いもした。

■良いディーラーは良いプライスを出さない?

 ロンドンで為替を始めたときに、吉澤建治さん(後の副頭取)から受けた訓辞は今でも忘れない。「ディーラーになってはいけない」と、まずディーラーを否定された。最高学府を出て政治・経済というのはある程度わかっていたうえで、ディーリングをやるのだから、そこだけをものすごくマニアックに追及する、いわゆる為替バカになってしまってはいけない、もっと大所高所からものを見ろという意味だった。

東銀においてはとにかく儲ければいいだけではなくて、さすが東銀だというふうに評価されるような意識を常に持てとも教育されている。必ずしもプライスだけでなくて、市場慣行委員会などでちゃんとしたオピニオンを述べることも含まれる。また、お客に対しても損をさせてはいけない。つまり、東銀に行ったらこんなプライスしかくれないというのはだめだということだ。

お客さんに、常に良いプライスを出そうとするのは、難しいところで、為替のセンスがあるディーラーはときとして良いプライスを出さない。例えば、商社が買いたいからプライスをくれと言ってきたとすると、お客がちゃんと買えるような良いプライスは出す。

だが、両サイド出してくれと言われると、これは、もう買いにきているに決まっているからと絶対にプライスを打たれないように寄せてしまう。プロを自認するお客にプライスを打たせるのを恥だと思っているからだ。当時はまだ手数料が少しもらえたから、お客の注文をマーケットでカバーすれば十分取れるわけなのに、彼らはそれをやらない。

このようなディーラー的発想の強い人は、東銀の中では余り評価されず、従って待遇面だけでなくて、もっと自分の能力を活かせる会社を求める人も少なくなかった。私の知っている限り、一番典型的なのは野村雅道くんだ。彼は非常に優れたディーラーであって、彼の能力は外銀でこそ発揮することができたのだと思う。

■サラリーマンだから続けられた

 三井物産の福間年勝さんから、東銀の為替の連中は、金太郎飴だと評されてハッとしたこともある。特にスターディーラーもいないし、さりとて話にならない人間もいない、だいたい皆言っていることややっていることは同じだと見えるらしい。

行内だと、皆とても個性的なのに、外から見るとそうなのだ。どこを切っても誰がやってもコンスタントに同じ東銀の顔が出てくるそういう教育を知らない間に受けたし、我々もそういう教育を部下にしてきたのだろう。

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しかし、私が為替を続けて来られたのは、サラリーマンディーラーだったからだと思っている。無理をせずに、自分のキャパシティに合わせて、これだけ我慢できるとか、これだけ損してもいいとか、これだけ儲ければいいとかいうことを守ってきた。プロのディーラーと違って、我々は良い成績挙げたとしても、別に給料が増えるわけではないし、損をしてもクビになるわけでもない。となれば、そんな無理してまで、やらなくたっていいじゃないかということになる。

だから、退路を断って、ディーリングをしているプロのディーラー方を前にして、とても「私はディーラーでした」などと胸は張れない。

自分が外銀に移らなかったのは一からマメに努力して儲かる体制を整える自信がなかったからだ。為替で儲けるためには、それなりの体制(仕掛け)が必要になってくる。個々の相場というのは、自分のフィーリングでやるしかないけれど、儲かるような体制にしておくのは最も大事なことだ。

つまり、組織、人材、お客、当局パイプ、交友関係など、周囲を固めて情報がちゃんと入ってくる、また自分がやりたいことがすぐできるような環境にしておかないと、儲からない。東銀では、その土台(看板)となるものは既にある程度でき上がっていた。

為替をやってきて良かったのは、経済合理性がよくわかっていると物事に対して瞬間的、直感的な判断に結び付けられるということだ。為替バカにはならないと思いつつ、東銀ではほぼ為替畑一本で通ってしまったが、結局為替で積んだ経験は全てに活きている。おかげでサラリーマンディーラーからサラリーマン社長になり、ロンドンのバンク・オブ・トウキョウ・キャピタルマーケッツ(証券)以来、通算18年、まずまず快適に過ごしている。

(全編終了)

*2010年05月10日の取材に基づいて記事を構成
 (取材/文:香澄ケイト)

【前編】為替の専門職としてスタート
【中編】プライスリーダーの光と陰
【後編】為替から経済合理性を学んだ

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TheFxACE(ザ・フェイス)企画チーム / TheFxACE

為替ディーラーのご経歴を持つ方々に、ご自身の生き様や相場に対する考え方などをお伺いしていきます。

[取材/文]
香澄ケイト(かすみ・けいと)/外為ジャーナリスト

米国カリフォルニア州の大学、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国後、外資系証券会社で日本株/アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事。退職後、株の世界から一転して為替証拠金取引に関する活動を開始し、為替サイトなどでの執筆の他にラジオ日経への出演およびセミナー等の講師も努める。

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