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ディーラー烈士伝

「歴史のダイナミズム、為替に通ず」 ― 花井健 氏 [中編]

2010年05月19日(水)

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(前編はこちらから)

■竜馬が説いていた為替の重要性

 正しいかどうか分からないが、史的唯物論的アプローチに則って、なぜ為替というものが存在するのか、またその歴史を紐解く必要性を強く感じて、吉野俊彦氏の『円』や、三上隆三氏の『円の誕生』、佐藤雅美氏の『大君の通貨』などの様々な文献を読み漁った。

そして、司馬遼太郎氏の『竜馬がゆく』で、坂本竜馬が日本発展の指針として為替をしっかりオペレーションすべきと主張していたことを知る。為替が、日本民族にとって将来の発展のために最も大切にすべきもののひとつと提言した人が坂本竜馬だったのだ。1867年に竜馬が起草した新国家体制の基本方針とされる『船中八策』の第8番条項「金銀物資、宜しく外国との平均法を設くべき事」にその精神が貫かれている。

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海援隊・亀山社中を組織し東アジア諸国との貿易の一端に関わっていた竜馬は、為替取引を実際に経験している。江戸末期、本来ならば銀の含有量をベースにしたら1ドル=1分銀。国内相場の1両=4分銀であれば1両=4ドルであるにもかかわらず、1ドルの重さが銀の含有量関係なく3分銀と同じだと米国に主張され、長崎奉行は結局1ドル=3分銀、4ドル=12分銀=3両の交換に応じてしまう。海外勢にとっては濡れ手に粟。日本から金貨の流出、物価高騰で価格転嫁できない武士階級の困窮が倒幕のエネルギーになったことも為替政策の脆弱性がなせる業と知った。

この理不尽を見て竜馬は『船中八策』で、外国との為替政策の重要性を説いたのだと思う。しかし、明治政府は『五箇条のご誓文』にこの通貨政策を加えなかった。これが為替の歴史ひいては日本の経済政策の歴史の中でもトップクラスの不幸だと思っている。

ドル円は1871年に新貨条例が出来た後、1874年1ドル=1円でスタート。日露戦争、日清戦争で1ドル=2円だったのが、関東大震災後に2.4円。この歴史のアナロジー(類似性)を活かして、関東大震災の被害がGDPの20%以上を占めたのに対し、阪神大震災は10%には満たなかったが、それでも円安に振れるのではと予想できた。歴史を謙虚に細かく紐解いていれば相場に対するヒントは必ず見出せると思っている。

為替の国家的位置づけは日本のそれと、海外の位置付けとは本当に違うと感じた。ドイツは、第一次世界大戦以前は1ドル=4マルクが、敗戦後は、1ドル=4兆マルクまで進み、マルクがポンカスになってしまったという。ドイツでは当時の極めて過酷で屈辱的経験から、通貨は基本的には強くあるべしという通貨の常識を国民全体が共有していると思う。しかし、日本人には米国によって政治的に齎された360円の幻想が跋扈し、為替への確固たる意識はあまりない。360円が嚆矢、円安がいいという感じが一般的コンセンサスになってしまっていることが気になって仕方がない。

■「ハードワーク」の精神

 有力ヘッジファンドや海外有力ディーラーに「為替で最も重要なことは?」と尋ねたところ、「それは、ハードワークだ。日本人は、経済力をつけて、認められるため、幸せになるために、戦後、必死になって働いたじゃないか、その精神を俺たちは真似しているんだ」と言われ、目からウロコが落ちるような衝撃を受けた。

加えて、「為替は、世界的には非常に認められた仕事であり、為替で名を馳せれば、政府機関や銀行のトップ、有力ファンドマネージャーに招聘されるチャンスだってあるのだから、お前も頑張って為替で生きたらどうだ」と言われた。日本のディーラーの社会的・組織内的位置付け、そして意識とは雲泥の差があることを痛感した。

日本人は、一生懸命働いた果実をアメリカに還流。そしてドルは下落。働き続けたわりに最大多数の幸せになれないのは、為替政策がひとつの原因だと思っている。島国で、ゲオポリティクス(地政学)や歴史学や行動経済学に慣れていないということも背景にある。地政学も含めて、歴史背景を知らないと、経済でも勝ち抜けないし、自分たちの子孫へ残すべき国の富は枯渇してしまう。

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85年9月のプラザ合意の起こる、まさに前週末の金曜日は翌土曜日の明け方4時まで銀行に残り、ドルを売りポジションの最終処理をしていた。いつもならNY金曜の夕方は、オフィスに残っているディーラーはほとんどいないはずなのに、ドル売りを締めるドル買いオーダーが間断なく成約する。しかもドルは戻らず不気味にジワジワジワと下がっていく。興銀ニューヨーク支店からはなんら情報は掴めなかったが、ドルを静かに売っているのはシティ、モルガン、バンカーズ、チェースといった有力米銀だった。

ドル売りポジションを閉じ利益を出せば楽にはなるが、その不気味な空気に酔わされたみたいにポジションは維持することにした。帰り際に一旦消したオフィスの電気をもう一度点けたりした。あの奇妙な胸騒ぎを、今でも鮮明に思い出す。

週明け、9月23日の月曜日秋分の日、早朝からドルは大幅に下落。目を瞑ってドルを売ろう!とシンガポール支店の担当の吉川正夫トレーニーに伝えた。あそこで売らなかったら、きっとあのドル下げ相場はずっと売れなかっただろう。もし、あの日買い戻しに入っていたら、歴史的プラザ合意の意図や相場の血流を肌で感じられなかったと思う。

プラザ合意という為替の歴史的大イベントに運命的に関わり身にしみたのは、日本は本当に島国である、日本は独自の都合のいい判断基準でものを見る、そして世界からうまく利用され、なぜか日本は何も知らないということだった。海外市場参加者は、インサイダーとは言わないが、彼らの当局との関係から歴史的な動きにスタンバイしていたと思うからだ。

■優秀なディーラーは弾力性に富んでいる

 しかし、日本の為替市場参加者にも兵はいた。ディーラーには、為替という世界の限界の存在を自ら主張、現状に甘んじ、単なる表層的な世界での収益追求手段と見る人も多い。一方で、為替という世界の奥深さ重要性を十分認知し、自らハードワークでバイオリズムを築き上げ実績を残し、為替のステータスアップに努められてきている名だたるディーラーも少なからずいた。

中山恒博さん、坂本軍治さん、中山茂さん、堀内昭利さん、この特集で既に掲載された諸先輩。そして有力日本企業の為替責任者の方々。各員夫々個性があまりにも強烈で、後輩としてお付き合い頂く際には非常に緊張する気持ちは今も変わらないが、為替相場に人生をかける真の生き様を見せてくれたし、そうすることによって日本という国の真実を真正面から捉え、そして為替の重要性を、身を持って意識させてくれた人達でもあると思う。

ドル円を卒業し、ドルマルクを担当することになった。当時ファーストシカゴ銀行の坂本軍治さんにご指導頂き、マルクをうまく付き合えたら一人前だ、と言われた。最初はその意味が分からなかった。マルクは通貨の核で、日本のディーラーで、マルクで儲けられる人などいないとよく言われていた。

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ある日、オーバーナイトで、マルクで5,000万円近く儲けて、意気揚々と敗戦処理が続く他行のディーラーとの飲み会に参加した。「いや〜、マルクなんて簡単だよ。まだ、俺、売りポジションキープしているんだ」と偉そうな発言してしまった。ところが、深夜帰宅したらドル暴騰で倍返しの敗戦。つくづく人間奢ったら駄目なんだと思った。相場の神様は平等で必ず見ていて、真剣に且つ謙虚に相場に対峙する人にこそ、その分のチャンスを与えてくれる。

為替を通じて、学んだことのひとつに、人の人生には人それぞれのバイオリズムがあり、ハードワークの度合いによって、その人その人にバイオリズム(大きな流れ)を指し示してくれるということがある。誰にも、同じように勝負するチャンスは与えられる。そのチャンスに気づき、それを謙虚に受け止めて、トライできるかどうか。しかし、逆に奢り偉ぶると、このバイオリズムが狂いスコーンとチャンスを失ってしまうどころかチャンスさえも与えてもらえない。

(後編に続く)

*2010年04月19日の取材に基づいて記事を構成
 (取材/文:香澄ケイト)

【前編】「虫の眼、鳥の眼、魚の眼」のディーリング
【中編】「円の歴史」から相場を知る
【後編】飽くなき探究心で為替に一生携わる

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>>「The FxACE(ザ・フェイス)」インタビューラインアップへ





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TheFxACE(ザ・フェイス)企画チーム / TheFxACE

為替ディーラーのご経歴を持つ方々に、ご自身の生き様や相場に対する考え方などをお伺いしていきます。

[取材/文]
香澄ケイト(かすみ・けいと)/外為ジャーナリスト

米国カリフォルニア州の大学、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国後、外資系証券会社で日本株/アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事。退職後、株の世界から一転して為替証拠金取引に関する活動を開始し、為替サイトなどでの執筆の他にラジオ日経への出演およびセミナー等の講師も努める。

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