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FXダイアリー

「手数料下げ競争、FX業者に警告 金融庁 採算悪化など懸念」について

2009年05月12日(火)

5月4日に以下の記事を読みました。今日はこれについて考えます。

「金融庁は外国為替証拠金取引(FX)業者が売値と買値の価格差を示す「スプレッド」を過度に低く抑えていることを問題視し、業者に向けて警告し始めた。行き過ぎた競争で採算が悪化することを警戒するとともに、虚偽広告の恐れもあるとみて、監督指針を改正する。重大であれば業務停止命令を発動できるようにする。
 FX業者は外国銀行などからドルなどの外貨を仕入れて、一定の手数料を乗せ顧客に販売する。例えば1ドル=97円50―52銭であれば、97円50銭で買い、同52銭で売り、差額の2銭がスプレッドというわけだ。現在、FX業者の間で手数料を含めた価格差を投資家でなく業者が負担する「低スプレッド競争」が起きている。」
(出所:NIKKEI NET 元記事はこちらから


説明の間違い:スプレッドとマークアップ

些細なことだが、一般にこの業界では、50で仕入れて、2ポイント乗せて52で売る時の2ポイントの利益をマークアップと呼ぶ。スプレッドは上記例では97.50−52の差の2ポイントをさして使う場合がほとんどである。無論広義においては、それもスプレッドといえる前提での話。

説明の間違い:ヘッジのモデル

ここでの対象となる、スプレッドを過度に低く抑える業者は、記事の説明のようなマークアップを乗せて50で仕入れてから52で売るというモデルではやっていないはずである。
ほとんどの場合は、OTCのディーリングとして顧客から放り込まれるポジションを適宜ヘッジするやりかたで、利益を出すヘッジのときが多くであったとしても、ある程度の部分損切りをする。ただし一日締める段階では合計がプラスで終わることができる程度のスプレッドは最低限守る、というやり方である。イメージしにくいかもしれないが、明確に違うのは、仕入れてから売るのではなくて、顧客に売ってからインターバンクから仕入れるのである。だからそれを“ヘッジ”とか“カバー”と呼ぶのである。仕入れてから売るならそれをヘッジとかカバーとは呼ばないのである。個人的趣味の問題かもしれないが、私はこういう重要な部分の勘違いは看過したくないので個人投資家にはどっちでもいい話だが、あえて指摘させていただくことをお許しいただきたい。

このモデルで利益を確保する低スプレッドのメカニズム

大きなフローが手元に発生すればするほど、細かく売り買いが交錯すればするほど、このモデル(ディーラーインターベンション:DI)はより安定的な収入を実現して行くものであり、基本的にはインターバンクのやり方と同じである。ただし、リスクとしては一気に一方向に相場が流れ、それに対して多くの顧客が一気についていくとき、業者は反対ポジションを一瞬にしてとらされ、みるみる値洗い損を膨らませることになる。素早い損切りの判断とそれが実際にできる高機能なシステムインフラがないと逃げ遅れて大損を出す。たまに、一部の業者で一日に一回しかカバーしないとか、数時間後とにしかしないといううわさを聞くことがあるが、客が増えて取引量が増えてくるとそれは危険なオペレーションとなる。普通人間がDIをする場合は、新たなポジションが客から放り込まれると最大でも1分単位ぐらいで、それが利食いであれ損切りであれ、カバーをとりにいかないと、リスク管理としては安心できない。銀行なら体力があるし、経験に裏打ちされたリスク管理能力も高いのでそうした事態にも冷静に対応するものだが、経験の浅い業者だとこれが致命的な経営のリスクになることがある。ただ始まって10年、幸か不幸か、それが顕在化したという事例の記憶は私にはない。

画像(180x134)

通常こうしたOTCのモデルで取引を提供する場合は、そうしたリスクに見合った内部留保が蓄積できるように考えてスプレッドをコントロールするものなのだが、そうした考えがないと、目先の営業費用だけがベンチマークとなり、まあまあの利益でも我慢して顧客獲得競争に走る結果、スプレッドが極端に低くても、その分客が集まり、取引高が増えることで結構な利益が得られるため、スプレッド縮小―> 取引高増加―>最終利益増加―>さらに縮小、というチキンレースのスパイラルにはまっていく。裏側のリスクの増加がよく見えない。

金銭信託義務化の副作用

低スプレッドの業者の経営リスクが高いと警鐘を鳴らしても、今回の金銭信託義務化によって、顧客から見ると、業者が倒産したら、そのときのドサクサに巻き込まれる難儀さはあるにしても、最悪、預けているお金の大部分は還ってくることが保証されるわけで、業者の信用リスクをテクニカルには無視してただスプレッドの低い業者を追いかけることを容易にしてしまう。

為替業界のドンキホーテ

低スプレッド戦略は、競合他社を追い落とすには、どの産業セグメントでも行われるMarket Penetrationのやりかたであるのでそれ自体が悪いとは思わない。自由資本主義経済なのだからしかたがない。むしろその恩恵を一般消費者(投資家)は享受するのだから一見して良い話である。為替業界のドンキホーテみたいなものである。ただし、モノとちがって、収益にはすさまじい高回転のレバレッジがかかっていることを忘れて、メンテナンスや、相場急変時の対応シナリオを用意しておかないと、規模の差こそあれ、リーマンみたいな“ゆでがえる”がこの業界から生まれかねない。そこが、監督官庁も警鐘をあえて鳴らし、危険視するポイントなのだろう。

リーマンを引き合いに出したついでに、リーマンのかつてのCEO リチャードファルド氏(Lehman Brothers CEO Richard Fuld)が公聴会で言った言葉が印象的である。

誰の落ち度だったのか、
なぜ私は失敗したのか、
私は毎晩、眠れず考え続けています。
ちがうやりかたはなかったのかと、何度も何度も。
ちがうやりかたはなかったのか?
ちがうやりかたはなかったのか?
特定の議論のなかで、わたしは何を言えたのだろうか。

(和訳、筆者、ソース:NHKスペシャル「マネー資本主義より」)



Posted by 尾関高

プロフィール

尾関高

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコにて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年からひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引をシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始した。
その後米国FX業者でのニューヨーク駐在や、帰国後日本のシステム会社勤務等をへて、現在は、米国インテグラル社の日本支店に勤務。そのかたわら、本業のみならず、FXにかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)がある。。

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