多極化する金融世界
多極化するFX世界
2009年01月28日(水)
■きっかけはリーマンショック
2008年9月のリーマンショックから個人投資家の投資スタンスが大きく変わってきています。これまではAUD/JPYやNZD/JPY、ZAR/JPYといった高金利通貨をロングするいわゆるキャリー取引が主流でした。多少の相場変動があってもスワップ金利を得ることによってその損失をある程度カバーできたからです。しかし、リーマンブラザーズの破綻によって、ドルを中心に各通貨は下落。金利も低下し、取引する通貨によっては売り買いのスワップが逆転する状況となりました。
■2008年は各社の明暗が分かれた
近年のFXは小額から始められること、スワップ金利が得られることで大きく成長してきました。FXを取扱っている各社の大半はこうした顧客層を獲得し口座数・預り残高を増やしてきたワケですが、上記のきっかけで大きな痛手を被ることになりました。

※ http://forexpress.com/trader/compare2008-q3.html より抜粋
上記の表は預り残高で上位の取引会社(くりっく365含む)から表しています。5社のうち3社は預り残高が大きく減少していますが、残りの2社は増加しています。リーマンショックによって取引会社は大きな痛手を被ることになったのですが、反対に伸びている取引会社もあります。何故でしょうか?
表の上位3社はキャリー取引を主体としたイメージがあります。ことスワップ金利について、上位3社は個人投資家の中でも最高水準の定評があったと思います。残りの2社は短期売買を主体としたイメージがあります。いち早く手数料の無料化を行い、スプレッドやレバレッジの改善を行う等、その動きが注目されていたかと思います。また、スワップ金利が低下したことで,これまで買い一辺倒だった個人投資家が「売る」ようになってきました。基本的に売りから入る取引は短期売買が多く、結果として短期売買に向いている(そういうイメージがある)取引会社が選ばれたのではないかと私は考えています。
■競争というよりはむしろ“生き残り”を模索
リーマンショックをきっかけに多くの取引会社は預り残高を減少してしまいました。どの取引会社も預り残高の回復は急務であり、今日まで様々な工夫が練られたと思います。テクニカルを中心としたセミナーやコンテンツの提供も多くなったと思いますし、短期売買を主とした個人投資家を取り込むためにスプレッドやレバレッジの変更、リッチクライアントの導入等サービスが大幅に改善されたところも見受けられました。しかし、もともとのビジネスモデルが疲弊しているなかで、そういった顧客層の獲得を新たに目指すのは多額のコストがかかることであり,逆にその取引会社にとって命取りになってしまうのは言うまでもありません。また、FXだけではなく、CFDや取引所FXの取扱いを行い、収益基盤の安定化を目指す取引会社も見受けられました。こうした動きは私からは競争というよりはむしろ“生き残り”を模索しているように見えました。
■2009年5月からは大証FXが始動
これまでOTCのFXと取引所FXのくりっく365の二極化した世界でしたが、2009年5月から大阪証券取引所でもFXを上場する動きになっております。第三世界(大証FX)が始動することで、FX世界の様相は大きく変化すると思います。その変化としては既に同じ取引所FXのくりっく365で起きています。くりっく365では2008年10月にシステムを刷新し、上場通貨ペアの拡充や機能の追加、取引手数料の改定を行い、来る2009年2月にはレバレッジを最大50倍まで引き上げました。システムの刷新は前々からあったのですが、その他のことは大証FXが背景にあったかと思います。今後はOTCのFX、くりっく365、大証FXと同じFXであっても多極化する世界になります。
■CFDは新世界となり得るのか
最近、CFDが注目を集めており、2008年末には2社の証券会社が取扱いを開始し、口座数も順調に伸びているようです。CFDはFXと同じように株式や株価指数を証拠金で取引することができます。現物株式や信用取引とは異なり、レバレッジが高く差金決済が可能で、海外の株式や株価指数も円で取引できるのが魅力です。FXのビジネスが厳しくなっていくなかでCFDの取扱いを検討する取引会社も増えていくと思います。
※CFDについては今後【CFDNOW!(CFDナウ!)】にてコラムを執筆していく予定です。
Posted by 葛木茂樹