為替今昔物語
企業経営者の社会的責任
2006年02月01日(水)
■ライブドアショック
1月16日ライブドアの関係会社が東京地方検察庁特捜部の強制捜査を受けた。それ以降の一連のライブドア報道には驚かされることばかりであった。1月23日に風説の流布と偽計取引という証券取引法違反容疑でライブドアの代表取締役を含む取締役3名と社員1名の逮捕という結果になった。
筆者が最も驚いたのは、同社の時価総額を拡大する為に、新規株式を発行し「企業買収」「株式分割」「株式交換」「投資事業組合」を巧妙に使い発行した株式を売却し巨額の資金を同社に還元した仕組みを考案し、実行したことである。特に投資事業組合を隠れみのに使った彼らの仕組みは、高度な証券業務知識を有している専門家で無いと考え付かない発想。しかし、専門家であれば、法律違反の可能性があるこの仕組みを実行に移すことは無い筈。「どんな手段を使おうと金を稼いだ者が勝ち」と考え、いとも簡単に実行に移した事は考えられないこと。正しい情報公開を求められる株式上場企業の経営者が考え実行に移すことではない。このような経営者は上場企業の経営者として相応しくない。
■責任を取らされるのは個人投資家
同社の発行株式数は10億4900百万株。これに同社株式の直近高値794円を掛けると同社の時価総額直近高値は8329億円となる。2005年9月末現在の株主数は22万人。その多くは個人投資家。ライブドアの株式は連日ストップ安で急落し、1月25日に6営業日振りに売買が成立した。終値は1株137円、時価総額は1437億円。ピーク時から約7000億円の減額。その損失は否応無く22万人の株主が追うことになる。
また、ライブドアショックで日経平均株式指数も大幅に下落し、ライブドアおよび同社の関係会社の株主にだけでなく、株式投資家全員に大きな損害を与えた。一企業の証券取引法違反容疑の行動で、その結果、大損失という責任を取らされるのはいつも一番弱い立場にいる個人投資家である。
株式市場は企業が直接資金を調達する重要な場。そして、投資家が最も重要な市場参加者である。企業経営者は今回のように不正な行為で市場にインパクトを与え、投資家に予期しない損失を与える行為を決してしてはならないことは言うまでも無い。
■人間は社会的な動物である
中学時代に覚えた英語の文章に「A human beings is a social amimal」がある。直訳すると、人間は社会的な動物であると言う意味だが、「人間は一人では生きていけない。社会があるから人間は生きて行けるのだ。同時に、誰もが社会の役割を果たす義務がある」と言う事を教えていると当時の先生が説明してくれた。それ以来、何かにつけこのフレイズが思い出される。人間が社会生活をする上で必要なルールを遵守することは社会的と共に生きる人間には最低必要条件。自分の利益のためには、例え騙してでも他人に損害を与えても構わないと考える人を社会は受け入れない。騙される方が悪いという意見もあろうがそれは違う。騙す方が悪いのである。
■登録業者の外為証拠金市場の健全なる育成に期待
さて、外国為替証拠金業界を同じ観点から見てみよう。法的な規制がなかったことから外国為替業者として外国為替市場を健全に育てるための十分な業務経験知識も責任感も無い多数の業者が参入し、多くのトラブルが発生し社会的な問題となった。しかし、改正金融先物取引法の施行により、このような多くの業者は淘汰された。
当局に「金融先物取引行」の登録を完了した業者数は平成18年1月23日現在46社。現在登録申請中の業者もあり最終的に登録完了する業者はもう少し増える可能性がある。外為証拠金市場の健全なる育成・拡大の為に法令順守と正しい投資家教育は不可欠である。登録完了業者は今回のライブドアの一件を他山の石として、投資家に信頼される企業になり、外為証拠金業界のイメージアップに努めて頂きたい。
Posted by 佐藤利光